【英国ヴィンテージのある暮らし】アーコール社エックスバックチェアの構造と歴史

英国ヴィンテージ家具を代表するブランドERCOL(アーコール)。
その豊富なラインナップの中でも、市場に出回る数が少なく、コレクターやインテリア好きの間で絶大な人気を誇るのが「エックスバックチェア(クロスバックチェア)」です。
一目見たら忘れられないシャープで洗練されたシルエット。そして、職人の手仕事と近代技術が融合した美しい構造。
今回は、数多くのアンティーク・ヴィンテージ家具を扱ってきたケントストアの視点から、正式名称である「No.376」の由来、構造的魅力、歴史的背景、そして現代の暮らしに取り入れるためのコーディネート術まで解説します。
1. 正式名称「No.376 ウィンザーラティス(Latticed)チェア」の由来

— Photo: ercol Official Archive —
現代のヴィンテージ市場やSNSでは「エックスバック」や「クロスバック」という通称で親しまれていますが、当時のアーコール社のカタログ上での型番は「No. 376 Windsor Dining Chair」です。
背もたれの中央で斜めに交差するスポークが、まるで美しい「格子(Lattice/ラティス)」のように見せる意匠から、当時の資料や家具愛好家の間では「ラティスバックチェア(Latticed Chair)」や「キャンドルスティックチェア」とも呼ばれていました。
2. No.376 エックスバックチェアが誇る構造美と職人技(クラフトマンシップ)

アーコールの家具が世界中で愛される最大の理由は、「伝統的なウィンザーチェアの意匠」と「近代的な木工技術」の融合にあります。クロスバックチェアには、その美学と技術が凝縮されています。
■背もたれと「貫(ヌキ)」が織りなすダブルXライン
最大のデザイン的特徴は、背もたれの中央で美しく交差する「X(エックス)」字のスポーク(クロスライン)です。
垂直のスポーク(背棒)が並ぶ一般的なウィンザーチェアに対し、斜めに交差するラインを入れることで、視覚的に引き締まったシャープでモダンな印象を生み出しています。
さらに見逃せないのが、脚部を補強する「貫(ぬき / Stretcher)」までもがX型に交差している点です。
・構造強度の追求として、4本の脚を対角線上(X型)に強固に繋ぐことで、細身でスタイリッシュな佇まいでありながら日常使いに耐えうる優れた堅牢性を誇ります。
・360度どこから見ても美しい抜ける視線により、背もたれから足元に至るまで視線が心地よく抜け、どの角度から見ても絵になる完璧な造形美を誇ります。
■無垢材の選定:エルム材(ニレ)とビーチ材(ブナ)の黄金比
アーコール家具を語る上で欠かせないのが、使用されている木材の組み合わせです。
・座面(エルム材 / ニレ)

チェアの顔となる座面には、環孔材(かんこうざい)特有のはっきりとした木目を持つエルム材(ニレ)が使われています。
一枚板から立体的に削り出された(座ぐり加工)滑らかな曲面には、力強く流れるような年輪の模様がそのまま浮かび上がり、天然木ならではの圧倒的な存在感と温もりを醸し出します。
・フレーム・脚部(ビーチ材 / ブナ)

一方で、背もたれのフレームや繊細なスポーク、体重を支える脚部にはビーチ材(ブナ)が配されています。
ビーチ材は緻密で均一な木肌を持ち、何より「曲げ」や細かな木工加工に対して非常に高い耐性(粘り強さ)を誇ります。
背を支える上部の緩やかなカーブ(トップレール)や、中央で緻密に交差する細いスポーク、そしてそれらをしっかりと受け止める脚部。細く削り出しても決して折れない高強度のビーチ材があるからこそ、軽やかで優美な「エックス(格子)」の造形美と日常使いの堅牢性が両立しています。
3. 英国名門「ERCOL(アーコール)」の歴史とイノベーション

— Photo: ercol Official —
なぜアーコールの家具は100年近く経った今もなお、世界中で高く評価されているのでしょうか。その背景には、創業者ルシアン・アーコラーニの革新的な情熱があります。
■創業者ルシアン・アーコラーニと蒸気曲木技術
1920年、イタリア生まれのデザイナー ルシアン・アーコラーニ(Lucian Ercolani)によって、バッキンガムシャー州ハイ・ウィカム(High Wycombe)でアーコール社は設立されました。
当時、英国古来の伝統的な「ウィンザーチェア」は手作業で作られ、量産には向いていませんでした。ルシアンはそこに「蒸気で木を曲げる(Bentwood)」加工技術と蒸気乾燥技術を導入し、加工が困難だったエルム材の安定した量産化に成功し、英国モダンデザインの礎を築きました。
■戦時下の「ユーティリティ家具計画」と技術的革新
第二次世界大戦中の1942年、物資が極度に不足した英国政府は「ユーティリティ家具計画(Utility Furniture Scheme)」を立ち上げます。これは、過度な装飾を排し「限られた資材で、頑丈かつ安価で美しい家具」を市民へ供給するための国家プロジェクトでした。
アーコール社はこの計画の中心として参画し、徹底的に無駄を削ぎ落とした機能美と、蒸気曲木・乾燥技術による省資源・高耐久な製造ノウハウを極限まで磨き上げました。
資材難という逆境の中で培われたこの職人技とデザイン思想こそが、後のアーコール黄金期を支える強固な礎となります。

— 1951年 英国フェスティバル(Festival of Britain)の様子 —
戦後の1951年に開催された「英国フェスティバル(Festival of Britain)」で、同社のシンプルで洗練された家具が高く評価されると、1950〜60年代のミッドセンチュリー期にかけて「No.376」をはじめとする名作たちが、英国中の家庭を彩る象徴的存在となっていきました。
■時を重ねるごとに増す「パティナ(古艶)」の魅力
ヴィンテージのアーコール家具が持つ最大の醍醐味は、「パティナ(Patina)」と呼ばれる経年変化による古艶です。
使い込まれたエルム材やビーチ材は、年月を経て飴色の深い味わいを纏っていきます。
新品の家具には決して出せない、歴史を重ねた本物だけの温もりと質感が、空間に唯一無二の奥行きを与えます。
4. 空間を広く魅せる「透ける美学」とインテリア提案

— Photo: ercol Official —
エックスバック(クロスバック)チェアは、その優れたデザイン性により、住空間から商業空間まで幅広いシーンで活躍します。
【ご自宅で】圧迫感を与えないダイニング&ワークスペース
日本の住環境において、「家具による圧迫感」は大きな課題です。 クロスバック構造により背もたれの向こう側が綺麗に透けるため、ダイニングスペースに複数脚配置しても視線を遮らず、部屋を広く・明るく見せる効果があります。
また、人体工学に基づいた背もたれのXラインと緩やかなカーブが背中を心地よく支えるため、食事の場だけでなく、長時間のデスクワークや読書用のパーソナルチェアとしても最適です。
【店舗什器で】商品の魅力を引き立てるアイコニックな存在感
アパレルショップ、サロン、カフェなどの店舗什器としても、エックスバックチェアは非常に人気があります。
ディスプレイチェアとして: 一脚置くだけで空間のアイキャッチに。お気に入りのバッグ、ヴィンテージの洋服、観葉植物などを座面に飾ることで、エックスバックのシャープな意匠が背景として機能し、商品の魅力を何倍にも引き立てます。
空間のアクセントとして: 360度どの角度から見てもスキのないデザインは、店舗の中央やガラス越しに見える位置に配置することで、お店全体の洗練された世界観を演出します。
5. エックスバック(クロスバック)チェアのある暮らし
英国の伝統的なクラフトマンシップと、モダンデザインの革新が融合して生まれたERCOL(アーコール)エックスバック(クロスバック)チェア。
生産数が限られている希少なヴィンテージ品だからこそ、一脚一脚に異なる木目の表情があり、時代を超えて受け継がれてきた歴史があります。
「ダイニングスペースをよりセンス良く、開放的に見せたい」
「長く愛せる、本物の英国ヴィンテージ家具を手に入れたい」
「店舗の雰囲気を格上げする特別な一脚を探している」
そうお考えの方に、自信を持ってお勧めできる名作です。 職人の手仕事と年月が育んだ本物の質感を、ぜひあなたの日常や大切なお店に取り入れてみませんか?
【お知らせ】No. 376(エックスバック)も「First Antique」対象商品です
今回ご紹介したErcol No. 376 Windsor(エックスバックチェア)も、ケントアンティーク家具の「First Antique(ファーストアンティーク)」プロモーションの特別対象アイテムとなっています。
■はじめての方も、コレクターも驚く価格とクオリティ
「憧れのアーコールを手に入れたいけれど、コンディションや価格が心配…」 そんな方にこそ知っていただきたいのが、ケントアンティーク家具の新たな挑戦「First Antique」です。
■なぜ、世界最高峰の修理品質と「驚きの価格」が両立できるのか?
通常、アンティーク家具の価格を左右するのは「修理コスト」です。
徹底的に修理を施せば価格は上がり、修理を省けば安くなるものの、ガタつきや塗装剥げといった問題が残ります。
そのため、「最高峰のリペア品質×低価格」は業界内でも実現不可能な矛盾とされてきました。しかし、長年全国のプロディーラーや高級家具店を支えてきたケントだからこそ、この常識を打ち破ることができました。
妥協なきケントクオリティ
ガタつき・ぐらつきの補修はもちろん、指1本でスムーズに開閉できる引き出しの調整、色褪せない美しい塗装の塗り直し、クッションまで新品に張り替えた座面。職人による手仕事を妥協なく施しています。
仕入れ交渉とコスト管理の徹底
ディーラーとしての長年の信頼関係によるバイヤーの仕入交渉と、自社専門工場での時代に応じた修理工程の見直しにより、品質を維持したまま限界価格を実現しました。
実物が見えないオンラインショップだからこそ、届いたときの安心と感動をお約束します。
※「First Antique」挑戦価格でのご提供は数量限定・先着順となります(予告なく対象商品や期間が変更となる場合がございます)。
プロが認める超一流の修理品質と、驚きのプライスをぜひ他店とお比べください。
◆ 今回ご紹介したNo. 376をはじめ、特別価格でご用意した限定ラインナップはこちらからご覧いただけます。
